サッカーへの反省

14回生  田口 孝詞

 私は第14回卒ですが、その後学徒動員の第1回繰上卒業生として兵役に服し、戦後はサラリーマンとして今日迄元気で過して居ります。学生、軍人、そして社会人を通じ共通して云える事は、日本人は戦略に疎いのではないか……と思われます。
 学生時代はさておいて、第2次大戦では明らかに戦斗は上手だが……と云う事ですし、現代企業の中に於いても、経営戦略等の優劣がその命運を左右する事の様です。
 私は12チャンネルでよくプロサッカーを見ますが、何時も感心させられるのは、個人技の見事さもさる事ながら、1度ボールを取ったら攻撃のお膳立が出来るまでのボールのキープカに見られる如き集団技には特に感心させられ、学生時代のサッカーの主将として何と無策であったかに強く反省させられるものです。もとより学生のスポーツはみずからそのレベルは知れたものですし、その目的も亦「健全な精神は健全な身体に宿る」の一手段に過ぎない事は今でも同感です。然し出場する限りは若人の情熱を集中し勝つ事が必要と思いますし又勝つ為には団体競技である以上、団体としての技を各個人技との連繋に於て形成する必要があると思います。
 即ち個人々を生かしそれを集約したコンビネーションの中から絶対的な得点を得るパターンを作り練習するとか、そのパターンを現れとする為のサインだとか、考えると色々あると思われますし、又敵の情報を試合前五分でも、又前半終了后でも敵の情報を集収し解析し、作戦を立てる位の事が出来なかったのかと残念に思い且反省しています。
 学生そして社会人へと通ずる人生に於ても亦個人の生活設計にも大なり小なり戦略志向は不可欠と思われ有機的な複雑な社会機構の中で生きぬく為には、学生時代からこの様な考え方がスポーツを通じ養成される事は大いに意義があり、団体スポーツとしてサッカーの存在価値も亦高く評価されるのではないかと思われます。
 後輩諸君、是非機械的な練習は止めて、皆で「之でよいのか?」と疑問を持ち、何を為すべきかの目的を定め、各人の目標も定め、欠落技術を補う様に練習方法を定め、実行する様にして欲しいと思ってます。